駅のホームでサバサンド
今は昔、サンドウィッチという名の伯爵がいました。
サンドウィッチ伯爵は「三度の飯より賭け事が好き!」なギャンブル狂で、寝る間も惜しんでポーカーに興じていたとか。
とはいえ、生きているからには、どうしてもお腹が空くわけで。そんなとき「片手にカードを持ったまま食べられる食事はないものか」と思案した結果、生まれたのがサンドイッチだったのです。
子どものころ、そんなマユツバな話を、お菓子の袋の裏側で読んだ。でも、幼心には「なるほど合点がいく」話だったようで、ずっと記憶の片隅に残っていた。ただ、ちょっと調べてみたところ、マユツバを通り越して、どうやら真っ赤なウソらしい。
エピソードの真偽は置いておいて、サンドウィッチ伯爵の「ほかのことをしながら食事をする」というスタイルに、私はものすごくシンパシーを感じている。
なぜなら私は「食事そのものを目的とした食事」があまり好きではないのだ。いや、好きではないというより、違和感があると言ったほうが近いかもしれない。
誰かと話しながらとかテレビを見ながらというように、ほかに何かやることがないと嫌なのだ。あまりにお腹が減っているときは別として、私にとって食事は“おまけ”要素が強い。
昨日は、護国寺から表参道、そして最後は羽田空港と、半日で東京を縦断しなければならず、ゆっくり腰を据えて食事をする時間がなかった。
それで仕方なく、駅のホームや乗り換えの間に「移動しながら食事」をしたのだけれど、これがなんだかしっくりきたのである。会話をしながらとかテレビを見ながらと同じくらい、自然な感じがした。
もちろん選んだのは「ながら」でも食べやすいサンドイッチ。ちなみにちょっといいサバサンド。
お行儀はよくないかもしれないけれど。サンドイッチ片手に移動しながら食事。なかなか悪くない。