「ここまでやるか」って女に私はなりたい|映画『ゴーン・ガール』
※ ネタバレあり
今さらながら『ゴーン・ガール』を観た。
基本的にあんまり洋画好きじゃないんだけど、
かれこれ6年以上の付き合いになる、わたしの数少ない友達「おのさん」が、「『ゴーン・ガール』に出てくる奥さんがせなどすに似とる」って言うからこれは観ないわけにはいかないぞと。
さっそくTSUTAYAで借りました。
ストーリー構成が神
で、観終わった感想ですが、もうね、すごい。
何がすごいって、あっと驚くようなストーリー構成。
思いっきりのめり込んでしまった。
おおまかなあらすじは......
ニックとエイミーは誰もがうらやむ幸せな夫婦。しかし、結婚5周年の記念日、エイミーが謎の失踪を遂げる。ふたりの過去がどんどん暴かれていくとともに、ニックは妻殺しの疑いをかけられる。
というもの。
物語の前半は、主人公であるはずの夫、ニックへの敵意と不信感がどんどん募っていくように作られています。
出会って、付き合って、結婚するまで、彼は完璧な恋人だった。愛にあふれてるし、いつも守ってくれる王子様みたいな。
それなのに!
結婚してしばらく経つと、仕事をクビになるわ、若い女と浮気をするわ、もう散々。
しかも、エリートでシティガールのエイミーを、自分の地元の片田舎に連れて帰っておいて。
女のわたしからすると「エイミーがかわいそう。こんな男捨てられて当然」という感じ。
映画のなかでも、周囲のニックに対する評判は最悪で、妻殺しの疑いまでかけられてしまいます。
随所に散りばめられた過去の回想は、エイミーの日記を彼女が読んでいる設定。だから、観ている方は主人公のニックよりエイミーに感情移入するはず。
もはや、主人公はエイミーで、ニックこそが諸悪の根源。エイミーは失踪したんじゃなくて、ニックに殺された。
それがこの物語の真実......と信じきったところで大どんでん返しが待っていたんです。
大どんでん返しに引き込まれる
なんと、エイミーは生きていました。
ここからがこの映画の真骨頂。物語が一気に逆転していくのが最高にスリリングでおもしろい。
この失踪劇は、自分をないがしろにしたニックへの復讐として、彼を殺人犯に仕立て上げようとした、エイミーによる自作自演の狂言。
しかも物語の舞台、ミズーリ州には死刑制度がある......。
エイミーは自分の夫を合法的に殺すため、ニックに容疑がかかるように完璧な偽装工作をしていました。
その偽装工作がもうほんと狂気的。
妊娠を偽装するために、近所の妊婦の尿を採取したり、ニックに殺人容疑がかかるよう、自分の血を抜いて床にまいたり......。
前半で感情移入していたはずのエイミーがどんどん遠い存在になっていって、最終的には「この女、怖すぎる......」に変わってる。
ついさっきまで憎んでいたニックがとても気の毒に思えてきます。
この映画のすごいところはまさにこの振り幅。最低のダメ男だったニックが、気の毒な一市民に変わり、かわいそうなエミリーが、狂気的な恐ろしい女に変わる......。
自分の感情がこんなに大幅にかき乱されることってそうない。久しぶりに本当におもしろい映画を観たって感じでした。
「ここまでやるか」って女になりたい
狂気的な完璧主義者エイミーに「ここまでやる!?」とドン引きしてしまったのは事実。
でも同時に、なんだかちょっと憧れのようなものを感じてしまった。
「私の人生は完璧でなければいけない」っていう強い信念みたいなものが、行き過ぎてて怖いんだけど、どこかカッコよく思えた。
自分の人生は自分だけのものだもの。自分の好きなように演出しなくちゃ。
何事も「ここまでやるか」ってくらい突き詰められる女になりたいと、すっかり感化されてしまいました。